第三のジャージ・オルタネイトジャージについて

NBAを含むプロスポーツのチームジャージなどで、白を基調としたホーム用と、濃い色のチームカラーを基調としたアウェイ用(ロード用)ではないものを指す時に使う‟オルタネイトジャージ”という言葉があるのだが、実はwikipediaにもこのオルタネイトジャージ(alternate jersey)という言葉のみで独立したページがなく、第三のジャージ(Third jersey)という項目の補足といった感じで掲載されている。
そもそもこの‟オルタネイト”という言葉、和訳すると『AとB以外のもの』『既存の型にはまらない』といった意味合いになるらしく、それを踏まえるとジャージとしては『(既存の)ホーム用でもアウェイ用のどちらでのない』ものがそれに該当するという事になるのだろう。
2013年2月に正式採用となった半袖タイプのジャージも、チームが過去に使用していたデザインの‟スローバック”と呼ばれるジャージも、とにかくホーム用かアウェイ用のものではないものは全てオルタネイトジャージとなり、リーグ側も規定でその数を明確には縛っていないようなので、その数は事実上無制限という事になるのだろう。
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ゴールデンステイト・ウォリアーズなどは、オルタネイト・ジャージの多さを顕著に表す好例である。
タンクトップ型の2パターン(ホーム&アウェイ)に半袖ジャージが3パターン(ホワイト、イエロー、ブラック)。そして半袖ジャージをベースに写真左上のようにクリスマスや中国の旧正月、ラテンナイト(中南米のNBAファンをターゲットにしたイベント)といったシーズンイベント毎のジャージを3~4種類持っている。
ここに、チームが過去に使用していたデザインのスローバックタイプを含めれば更にパターンは増し、1シーズンに着用できるユニフォームの数は10~12タイプという多彩なバリエーションになり得る。
おそらく現時点でジャージパターンの最多を誇るのは先に挙げたウォリアーズだろうが、シーズン毎に着実に力をつけ、ついにはチャンピオンとなったウォリアーズのこういったメディアミックス戦略は、弱小ドアマットチームがリーグの頂点にまで駆け登るのに効果的な手法だったと考える他チームの球団経営陣も少なくはなく、2年前あたりから『右向け右』でウォリアーズに倣って新たなジャージを発表するチームもいつになく多かった。
昨シーズンのプレイオフが始まるか否かというタイミングで、ユニフォームに関してのニュースを提供してくれたのはダラス・マーベリックスだった。
デザインをファンから公募し、1000件超のアイデアの中から胸の部分にダラスの街のスカイラインがプリントされているものが選ばれた。
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その後ロサンゼルス・クリッパーズがロゴの刷新と共に、新たなユニフォームのデザインを発表した。
このチームに関してはウォリアーズに倣ったわけではなく、人種差別発言で永久追放された元オーナー、ドナルド・スターリングにもたらされた悪印象から脱却する為にロゴとユニフォームの刷新を進めたのだろう。
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更に6月下旬にアトランタ・ホークスがチームの売却を機に新ユニフォームを発表。発表会の時は奇をてらっただけのようなデザインにも見えたが、10/18現在、プレーヤー達がプレシーズンゲームでアリーナの照明の元着用しているのをニュース画像で見たら、生地自体のパターンや今までにないボルトグリーンという蛍光のような色が斬新で好印象を抱いた。
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トロント・ラプターズは7月下旬にプレシーズンから使用している新ユニフォームのデザイン4つをチームのウェブサイトに公開した。その後8/3にチームの公式大使であるラッパーのドレイクがライブ会場で着用してファンに新ユニフォームをお披露目した。今までのラプターズと違い、ロゴキャラクターを廃したシンプルなデザインになっているが、ファンには好評のようである。
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マイアミ・ヒートはオーナーのミッキー・アリソンが新たなオルタネイト・ユニフォームのデザイン案をinstagramに掲載し、これを採用すべきかネット上でファンたちに意見を求めた。
カラーリングは1980年代にアメリカで放送されたテレビシリーズ『Miami Vice』からヒントを得たもので、ローカル色の強いユニフォームデザインは、ファンの反応も非常に良好だと伝えられている。
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クリーブランド・キャバリアーズは、昨シーズンオフにデザイン案としてのみメディアに出たパターンを、今シーズン使用するかどうかを思案している模様で、実試合でお目にかかれるかどうかは不明だが、過去のデザイン案のカラーリングだけを変えたようなこのユニフォームなら、地元ファンも異論を唱える事は少ないだろう。
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オクラホマシティ・サンダーは、ホームカラーの半袖ジャージと、いかにもオルタネイトといった雰囲気のあるオレンジのジャージを発表。
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013-14シーズンを15勝67敗という不名誉な成績で終え、リーグの底辺にさまよい続けるチームかと思いきや、2014-15シーズンは41勝41敗でプレイオフに進出したミルウォーキー・バックスは、今期以降も成長を続けると思われ、そういう期待を含めてのフルモデルチェンジとなった。バックスはイメージチェンジと呼ぶに相応しく、ユニフォームだけでなくロゴキャラクターやコートデザインまで変更している。肝心のユニフォームのデザインも、シンプルでレトロな雰囲気を現在の風潮に合わせうまくアップデートしている良質なものであると思う。
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他のチームも、脇下のサイドライン辺りに星を配置させたもの(シクサーズ)、『Clutch city』『NOLA』『BUZZ CITY』といったフランチャイズの略称や俗称のみを胸部に配置したもの(ロケッツ、ペリカンズ、ホーネッツ等)チーム名を配置させず、ロゴのみを胸部中央に配置させたもの(キャブス、ウィザーズ、ナゲッツ等)など新モデルとして発表しているが、以前から使用しているデザインのマイナーチェンジといった雰囲気で留めているチームも多い。

既にプレシーズンゲームで実用されているものやデザイン案としてのみ存在するものを織り交ぜて紹介させて頂いたが、新たなファン層の獲得やアパレル商品としての価値の模索といった、どちらかといえばファンに歩み寄る形での新ユニフォームの発表が多い。